高齢化が進む日本では、認知症患者が増えているのは憂慮すべき事態です。
認知症を発症すると、日常生活すら困難で色々な悩みがありますが、
相続の際にもリスクが大きいので気を付けて下さい。
この記事では、認知症による影響と、対策について紹介していきます。
1.認知症患者が相続時に家族に与える影響
認知症になると、本人の判断力は著しく低下していきます。
日常生活も大変ですが、法律的にも色々な制約が生じてくるので注意が欠かせません。
前後不覚のうちに、大きな買い物をすると本人も取引の相手も大変です。
このため、認知症患者には法律的に、できることの制限が生じてきます。
まず、制限が付きやすいのが、行為能力と言えるでしょう。
行為能力は、契約などの行為を自分だけの力で行う能力とされます。
これに制限が付くと契約や重要な手続が一部できなくなるのです。
患者本人の判断力が欠けているため、不動産を売るとかお金を贈与するなどの法律行為が、取消対象になります。
この制度を制限行為能力者と呼びます。
法的手続きを経て、行為能力に制限が付与された状態で、後見人などのサポートが必要です。
次に、意思能力に制限が付くと、全ての行為が無効になります。
無効になる理由は、判断力が極めて低いのはもちろん、本人の意思に基づいているかもわからない状況だからです。
この結果、相続の際には、生前贈与を「認知症の影響があったので取り消すべきだ」とか、
「この遺言書は意思能力がない状態で作ったので無効だ」と、親族同士で争うリスクが高まります。
不利な立場に立った相続人の中には、認知症や制限行為能力を口実に色々と主張する場合があるわけです。
2.親が認知症になったら?相続人ができる対策方法
親が認知症になっても常に意思や判断力が欠けるとは限りません。
よって、対策としては医師に診断書を書いてもらうのが一手です。
診断書で意思能力や判断能力について証明してもらいます。
この方法なら、例えば自身が不動産を生前贈与されてから、本人が亡くなった後、
他の相続人が言いがかりをつけてきても対抗可能です。
「意思無能力なので不動産の贈与は無効」と主張してきても、診断書があれば争えます。
逆に、意思能力を欠いていたことが明らかなら、その状態で行った遺言や生前贈与は無効になるのが基本です。
つまり、認知症になると、意思能力や判断力の有無が、本人の行動の結果を左右します。
別の対策としては、成年後見制度などを使うのも選択肢です。
成年被後見人になると行為能力に一定の制限がつきます。
自分でいろいろできない分、第三者がサポートするのが特徴です。
土地を手放すなどの大きな契約や、一定の手続きについては後見人や後見監督人、
場合によっては家庭裁判所が関与するので安心感は高め。
第三者がサポートして取引や手続きを進めるので、後から効力を覆される危険性が減ります。
他に、任意後見制度も、近年は注目度が高まってきました。専門家が後見人になって、
認知症患者の資産を管理するなど、色々とサポートするのが特徴です。
報酬を支払うために費用がかかるなどデメリットもあるので、他の方法と比較検討しましょう。
3.認知症患者が相続人になる場合の問題
日本は超高齢化社会ですから、亡くなった人の遺産を引き継ぐ、
相続人自身も高齢になっているケースが珍しくありません。
この結果、相続人が認知症を発症している場合もしばしばあります。
認知症患者は先述の通り、意思能力や行為能力に制限があるため、
遺産分割協議に参加できないなどデメリットが多いです。
また、遺言書によって負担付きで財産を譲渡されたような場合も、制限があります。
4.認知症患者が相続人になった時の遺産分割
制限行為能力者になると相続の承認や遺産分割協議などに制約が生じます。
もちろん、相続トラブルになった後に、訴訟などに発展すると更に事態の複雑化は避けられません。
対策としては、認知症患者が亡くなってから、その相続人が遺産分割協議に参加する方法があります。
ただ、これだと遺産分割できるのは、何時になるかわかりません。
現実的には、成年被後見人をはじめ、後見人制度を活用するのが選択肢です。
後見人は、認知症患者が自分で遺産分割協議に参加できなくても、代わりに手続きを行えます。
他にも色々な管理を任せられるので、相続人が認知症の場合は、前向きに考えてみましょう。
まとめ
認知症に関連する相続トラブルを解説してきました。
深刻な状況になってからでは遅いので、認知症の兆候が見られたら、早めに準備を考えるのがおすすめです。
多彩な事案を見て来た事務所なら、最適な解決策を提案できるので相談してみましょう。
相続については法的知識が欠かせず、色々な可能性を吟味する必要があるので、
無料相談などを活用して、信頼できる専門家を探してみて下さい。