公証役場で法律の専門家が作ってくれるのが、公正証書遺言の特徴です。
作成時には二人の証人がサポートしますので、間違いが起こる確率は低め。
このため、公正証書遺言は有効性が極めて高いのです。
しかし、実際には無効になるケースが存在します。
書き方の不備だけではなく、色々な理由で無効になるため要注意です。
この記事ではトラブルを防ぐためにも、要点を押さえて解説していきますので、参考にして下さい。
1.公正証書遺言は確実って聞いたけど?
ネットでも「公正証書遺言なら安心」と言う記事もありますが、残念ながら100%ではありません。
確かに、この方式には公証人が携わって、保管・管理も公的機関で行いますから問題が生じる可能性は低いです。
日付や署名なども、被相続人が自分で書くわけではないため、書式を間違うことはほぼないでしょう。
問題は、被相続人の認知機能の低下や、成年後見制度を利用しているなどのケースです。
他にもいくつかの原因で、リスクが生じます。
2.公正証書遺言が無効になる事由
公正証書遺言が無効になるケースとしては、主に下記に気を付けましょう。
・遺言能力がない
・資格がない証人がいた
・口授を忘れた
・遺言の中身に錯誤がある
・公序良俗ルールに違反
・すでに撤回されている
特に気を付けたいのが、遺言能力です。
遺言者は自分の判断で遺品の処理を決めます。
ところが、物事への認識能力が欠けていると、自分の判断でやったとは言えません。
このため、一定の事情があると遺言能力なしと判断されます。
例えば、成年被後見人が医師の立ち合いなしで遺言をしたら、無効になります。
15歳未満の未成年も、遺言能力を欠くため、効力は生じません。
遺言者はもちろん、立ち合いをする証人が資格を欠いていた時も、無効です。
例えば推定相続人や受遺者は、証人になれません。
口授は法的に欠かせない手続きです。
被相続人が口頭で遺言の内容を伝え、それを公証人が書き留めていきます。
これがなされていないと、重要な手続き違反として効力を失いかねません。
これが割と厳格で、判例では会話できない状態の本人が、返事の代わりに手を握り返したのが、
口授を欠いたとして無効と判断されました。
遺言の内容は、本人の意思に基づく必要があります。
このため、本人が言い間違えや計算ミスをしている時は、錯誤無効になりえるのです。
錯誤は簡単に言えば勘違いのこと。
遺言の内容をみて、どうも本人の意思と違うようなら、無効になりえます。
他には公序良俗違反も無効です。
これは民法全体の基本的な規定ですが、倫理的に問題のある法律行為は無効になります。
例えば麻薬取引や、報酬と引換に愛人を抹殺させるような内容が当てはまるでしょう。
最後に、既に撤回された遺言も効力を生じない可能性があります。
被相続人が、新しい遺言書で前の公正証書遺言を撤回すると意思表示したら、一般的には無効です。
ただ、撤回が取り消されたり、新しい遺言書が無効だったりすると、古い遺言書が復活します。
なお、撤回は他の種類の遺言書を使っても大丈夫。
自筆証書遺言で、公正証書遺言を撤回することもできます。
3.遺言が無効になるとどうなるの?
遺言が無効になると、通常は以下の3つの選択肢があります。
・死因贈与として扱う
・前の遺言を有効とする
・法定相続分による遺産分割を行う
まず、証人の資格を欠いて、公正証書遺言が無効になったケースです。
相続ではなくて死因贈与となると登記や相続税で違いが生じてきますが、
不動産を希望の相手に承継させる道は残せます。
次に、前の遺言があれば、これが有効になるので調査するのが大切。
たとえ遺産相続が終わっていても、また、長期間経過しても、時効などでは消滅しません。
そのため、古い日付で有効な遺言書がでてきたら、相続がやり直しになります。
こうなると建物の処分などで揉めがちです。
早い段階で遺言書の存在を確かめるか、生前に本人に確認しておくのが、おすすめです。
もしも、贈与もできず、他に有効な遺言も見当たらない時は、法定相続分によって遺産分割協議を行うのが基本です。
相続放棄や、相続資格の取り消しがないなら、
相続人全員が協議をして銀行の預貯金や土地などの相続財産を分けていきます。
法定相続分は被相続人との関係によって変わってくるので注意しましょう。
配偶者と子供1人なら1/2ずつです。
妻と子供2人なら、それぞれ1/2・1/4・1/4で相続します。
状況によっては兄弟や親等も相続の対象になりますが、友人などの第三者は含まれません。
まとめ
公正証書遺言が有効でなくなるケースを説明してきました。
遺言書は書式含め、何かとトラブルが多いのが特徴。
判断は難しい面があります。
また、相続は何かと心配ごとがあり、注意すべきポイントも多いもの。
知識を持った専門家のサポートがあると安心ですので、前向きに検討してみましょう。
どんな質問でも気軽にできて、実績・対応力のある事務所に相談してみてください。