相続手続きで遺言書がない場合、遺産分割協議をすることになります。
遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ成立しません。
協議が成立しない場合には家庭裁判所の遺産分割調停により解決を図ります。
ここでは、遺産分割調停の流れ、メリット・デメリットをご紹介します。
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停は以下の流れで行われます。
遺産分割調停申立書の提出
遺産分割調停を提起するには、まず申立書を作成します。
管轄裁判所に調停申立書を提出し、手数料を納付して手続きを行います。
調停申立書が受理されて相手方に送達されると裁判所から調停期日(調停を行う日)が指定されます。
調停当日に裁判所に出頭します。
調停期日に出頭
調停当日は当事者はそれぞれ異なる待合室で待機します。
調停委員に呼ばれて部屋に入り、意見を伝えて部屋を出ると、
次は相手方が部屋に呼ばれて調停委員と話をします。
相手の主張が終わったらまた自分が呼ばれて調停委員と話をする、という繰り返しで調停が進みます。
このように、当事者同士が顔を合わせることなく、調停が進められます。
調停成立・不成立
調停期日を経て、相続人全員が合意すれば調停が成立します。
合意しない場合や、これ以上協議を続けても合意する見込みがない場合は調停は不成立となり、
審判手続きに移行します。
調停が成立した場合、裁判所が調停調書を作成してくれますので、
その調書を用いて預貯金の払い戻し手続きや不動産の登記手続きを行います。
調停不成立の場合、遺産分割審判の手続きに移行します。
遺産分割審判では裁判官が相続財産の評価額や特別受益、
寄与分の有無などを判断して遺産分割の方法について審判を下します。
遺産分割調停のメリット
相手に会わずに済む
調停では相手とは別々の部屋で待機し、交互に調停委員と話をします。
そのため、相手方と合うことはありません。
揉めている相手と顔を合わせる必要がないので落ち着いて話をすることができます。
1人でも手続きが可能
遺産分割調停は話し合いにより解決する手続き方法です。
裁判のように書面審理ではなく、法律に関して深い理解も必要ありません。
申し立てや進行の手順も難しくありませんので、法律に詳しくない方が1人で手続きすることができます。
解決案を示してもらえる
遺産分割に関して調停委員から解決案を示して貰える場合が多くあります。
当事者同士では解決が難しい場合でも、調停委員の解決案を受け入れ、
調停を成立へ向かわせることが出来ます。
遺産分割調停のデメリット
全員が合意しないと解決に至らない
遺産分割調停は当事者が話し合いで解決を目指します。
したがって、相続人全員が合意できなければ調停は成立しません。
1人でも納得しなければ成立しない点では遺産分割協議と同じです。
自分が説得される可能性もある
調停では調停委員が相手を説得してくれる事もありますが、逆に自分が説得される事もあります。
そのため、調停委員に自分の言い分、意見をよく理解してもらえるように整理して伝えることも大切です。
調停が長期化する可能性がある
調停の申立てから調停の成立までは1年以上を要することが多く、
長期化した場合には2年程度を要することも少なくありません。
お互いが合意に至らなければ長期化する可能性があることは理解しておきましょう。
調停の開催日は平日の日中
1回の調停は午前又は午後に開催され、約2時間程度~約3時間程度かかります。
調停があるのは平日の日中のみですので、平日に仕事をされている方はお休み、
または遅刻・早退をする必要があります。
調停は大体月1回のペースで行われますので、毎月お休みをとらなければならない可能性があります。
遺産分割調停の手順を押さえて有利にすすめましょう
遺産分割調停は、調停委員を介して行われる相続人同士の話し合いの場です。
調停は調停委員が誘導するため、調停委員を味方にすることが調停を有利に運ぶためのポイントです。
調停では冷静にありのままの事実に沿って主張をする、一方的な主張を避け解決への姿勢を見せる、
社会の一般常識に従う、といったことに特に注意しましょう。